IT時代と言われて久しいですが、紙媒体による情報は減るどころか増加する傾向にあります。また、多くの製品が日常生活に密着しており、都市部に立地している工場が多いのが印刷業の特徴です。このため、印刷業にとって、環境に配慮した取り組みが今後ますます重要になっています。印刷工程においては、様々な環境負荷が発生します。用紙やインキ、機械類、薬品や油類などの資材が不可欠です。そのため、排出される廃棄物や化学物質も様々で、使用するエネルギーも多くなるためです。損紙や刷版に使ったアルミなどはリサイクルに回されますが、廃棄物になる資材も少なくはないため、削減が求められることになります。ここで、具体的な環境負荷要因とその対策について個別に見ていきます。まずは紙の問題です。紙の需要がさらに増加していくと、森林資源の枯渇にもつながりかねないことから、再生紙や非木材パルプ紙へのシフトが大きな課題となっています。

古紙の使用率は年々高まってはきましたが伸び率は鈍化傾向にあり、今後大幅な増加は見込めない状況です。さらに、再生紙の古紙配合率が大幅に削減され、その結果、古紙100%の再生紙はラインナップからほぼ消滅するといった状況も起こりました。これは一見、環境問題に逆行しているかのように見えますが、古紙の配合率が下がった要因としては、以下のような事情が挙げられます。第1に、ここ数年、中国や東南アジアでの古紙需要が急増し、国内の古紙価格も高騰したことです。そのため、品質を維持しつつ安定的に供給するのが困難になったことが挙げられます。第2に、生紙の生産にあたり、品質を高めるために過度の薬品添加が必要となる点です。そして第3に、グリーン購入ネットワークのガイドラインが改定され、『古紙配合率が高いほど環境に優しい』との考えから、『環境に配慮したバージンパルプも環境に優しい』という認識に変わりつつあります。環境問題は一筋縄ではいかず、『あちらを立てればこちらが立たない』といったことがよく起こるのも事実です。特に日本では、印刷の品質に対する要求が非常に厳しいため、その分、高いコストや環境負荷につながっている場合もあります。

しかも現場では、例えば付け合せ印刷など、紙を余分に刷って、いらない部分は捨てた方が納品価格が安くなるケースもあります。今後の環境対策も、社会状況や時代感覚に合わせた対応を心がけていくことが何より大切です。

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